紐を揺らすと大きな鈴がガランと音を立てた。
手を合わせて、目を瞑って。
ええっと、
沖田さんの風邪が早く治りますように。
あと、沖田さんが意地悪しなくなりますように。
もう一個、沖田さんが……
欲張りにいくつもの願いを心の中で唱えていたら、ふいに肩先を何かが叩いた。
「うん?」
振り返ってみると、そこには沖田さんが……
え……?
「ええええっ!? おっ、沖田さんっ!?」
いきなり願いが降って湧いた??
あまりにもびっくりした私は、反射的に数歩後ずさった。
お尻が賽銭箱にぶつかりかけた私に、沖田さんはきょとんと瞬きしてから、またからかうように笑った。
「あはは」
「な、何をやってるんですか、こんな所で!?」
「すぐそこに万病に効く泉があるから、巡察の帰りに汲みに来た」
ちゃぷんと音を立てたのは厚手の徳利で。
不意に目を細めて神社の額を見上げると、ちょっと顎を突き出すように伸ばして。
「ここって確か縁結びの神様だよね。何をお祈りしてたの?」
まさか、貴方とのことです――なんて、口が裂けたって言えるわけないじゃない!
「ねぇ教えてよ」
「気になりますか」
「んー」
考え込むように一言唸ったあとに、
「少し気になるけど?」
と、私の顔を覗き込んだ。
その顔が、あんまりにも近すぎて。
「……な、内緒ですっ!」
声が裏返ってしまった私の顔はきっと茹で蛸みたいに真っ赤になってる。