きみと夏まつり

4.喧騒に紛れてキスをした






「あれ」

兄上は母からの頼まれごとで、唐辛子の屋台を探しに行ってしまった。
待っている間、縁日の端のほうで木に寄りかかって人の流れを眺めていると、
良く知った顔が此方へと近づいてきた。

「総司? なにしてんの」
「井上さんと来たんだけどはぐれちゃってさ……そっちこそ何してるの」
「兄上を待ってるの」

ふうんと目を細めた総司の背中越しに、兄上の頭が見えた。
それに気づいた総司は木をぐるっと影の方に回り込んで、そして私の顎をひょいと持ち上げた。

ちゅっと軽く総司の唇と私の唇とが合わさった。

すぐに顔を離した総司は悪戯っぽく笑うとくるりと向きを変えて、

「じゃあもう少し、ぼくも井上さん探してくる」

と手を軽く挙げながら、人ごみの中へと走っていった。





24.8.16
確かに恋だった

Ref.Bakumatsu-souwa Okabore.


HomeBack
Copyright(C)2012 姫乃 All rights reserved. a template by flower&clover