きみと夏まつり
5題-1.煌めく世界ときみ
祇園祭から少したった頃、少しはなれた神社の夜祭に行くために、
私と平助様は三条大橋の袂で待ち合わせをしていた。
こないだと違う真新しい浴衣に金魚模様の帯。
頑張っておめかししたことに、平助様は気づいてくれるのだろうか。
指先で袖を引っ張って、浴衣の柄を眺めていると聞きなれた声が私の名を呼んだ。
「おーい」
手を振って此方へと駆けてくるあの人の後ろから、
鴨川に照った夕陽が川面に反射してきらきらと輝いた。
眩しさに目を細めた私に、「どうした?」と歩を緩めて笑いながら不思議そうに尋ねてくる。
「ちょっと眩しかったです」
「ああ、夕陽か」
「いえ」
「んー?」
伸び上がるようにして私の顔を覗き込んだ平助様の顔が近くて、
慌てて私はそっぽを向いてしまう。
「じゃあ、なんだよ」
「な、なんでもありません!」
「なんだよ、今日のお前変なの」
背中を向けた私にくすっと後ろから聞こえる笑い声に、私の頬は夕陽の色以上に真っ赤に染まって。
だって……
−−平助様が眩しかったから−−
なんて、言ったらきっともっと笑われるもの。