無題
5題-3 .興味ないねとアナタは笑った
無造作に束ねた髪を手の甲で払いながら、不知火さんは笑った。
「薩長が天下をとってこの国を治めるようになったんだろうが、そんなの興味ねえんだ」
「あなたのなさってきた事を見れば、藩主様もお取り立て下さいますでしょうに」
「そうじゃねぇ。ただあいつが居なくなっちまった今、藩に義理もなんもねぇわけで……」
そこまで言ってから、不知火さんははっとしたように言葉を止めて私の顔色を窺った。
「悪い、思い出させちまったな……」
「いいえ、大丈夫です」
相変わらず不器用で優しいところは、少しあの人に似ていて。
親友同士ってどこか似てしまうのだろうなと、思わず笑いが零れた。
「あいつの事まだ好きか」
「え?……ええ」
「そっか」
ぶっきらぼうにそう言って私に後ろ姿を見せた不知火さんの真意はどこか量れなくて、
「俺も……好きだ」
「はい」
「あーあ、敵わねぇよなあ!」
「え?」
急に大声を出した不知火さんに、少し驚いているうちに、彼は満面の笑顔で振り返った。