共に眠る

5題-4.背中と胸をくっつけて抱きこんで






暗闇の中、私に腕枕をしていた沖田さんの声が響いた。

「どうしたの? 寝られない?」
「うん」

   今日の昼間のことだった。
   沖田さんと甘味屋まで行った帰り道、
   突然二人の浪人風の男が、すれ違いざま刀を抜いて沖田さんに斬りかかったのだ。


「怖い思いさせちゃったよね」
「ううん、大丈夫」

   咄嗟に私は突き飛ばされて、目を開いた瞬間には血しぶきが舞っていた。
   跳ね上げられた肉塊が宙を舞って地面に落ちていくのが見えて、
   体の一部を失った一人と肩口から血を吹き出した男は、後じさったまま駆けだした。

   目の前で剣劇があった衝撃よりも、振り返った沖田さんの瞳が……
   修羅のようで。
   私の知らない沖田さんがそこに居て。


「じゃあ、こうしようか」

沖田さんはそう言うと、私を横にすると背中の方から包み込むように抱きついた。
いろいろと気遣ってくれる沖田さんを一時でも『怖い』などと思ってしまったことが申し訳なくて。

「沖田さん……」
「うん? なあに」
「……ごめんなさい」
「君が謝ること無いでしょ。危険な目に遭わせちゃったのは僕の責任なんだから」

背中越し、優しい沖田さんの声が聞こえた。
彼に感じていた恐怖が、柔らかい腕の温もりの中で、深い愛情へと変化していくのを私は感じていた。





24.5.6
現世の夢


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