共に眠る
5題-2.寝るまでは傍にいて
次に目を覚ますと、そこにはなんとなく覚えのある天井があった。
目に残る鮮やかな朱は、きっと夢などではなくて。
見知った人が自分の家の屋根の下で殺されたという現実に気持ちが悪くなった。
「何か見たか」
見上げるまでもない、部屋の主の斎藤さんの声がした。
声色は険しかった。
「……」
「血が……」
それだけ言葉にするのが私にはせいいっぱいだった。
斎藤さんは胸をなで下ろしたように、言葉をつないだ。
「他には何も見ていないな」
「うん」
「ならば良い」
寝具の横に移動して、私を案じてか顔を覗き込むその口調は柔らかいものになっていた。
「朝までまだ間がある、もう一度休め」
斎藤さんの匂いがする布団の中で、私は小さく頷いた。
涙がほっぺで乾いてかさかさしていた。
「……怖い」
布団をかけ直してくれた、その手を私は掴まえた。
虚をつかれて戸惑った表情を見せた斎藤さんの、薬指と小指をわたしはきゅっと握りしめた。
その行いを許してくれるように目を細めると。
「安心しろ。お前が寝るまで傍に居る」
「うん……」
私はその言葉を信じてもう一度目を閉じた。