共に眠る

5題-1.手、繋いで寝よ






旅先の宿では、枕一つとて違和感があり、
見上げる天井も何もかも見慣れぬばかりで。
それにしても、部屋一つとはいえ、やはり夫婦に見られているのだろうか……。
女将がきっちり並べて敷いた片側には、もう一人やはり天井を見上げる人物がいて。

「まだ起きてるか」
「起きてました」
「あれだけ歩いたんだ、もたないぞ」
「山崎さんこそ」

意識して足の筋を伸ばしながら一度大きく体を伸ばした。

「明日の出立も早い、さっさと寝ないと」
「じゃあ手、繋いで寝ましょうか」

軽口で言ったはずなのに、山崎さんからなんの返しも無かった。
なんだろう怒っているのかと内心慌てたのも束の間、
布団の中に動く物があって、私の左手に本当に山崎さんの掌が重ねられた。

「あったかい……」

吃驚したのに喉から湧いて出たのはそんな言葉だった。
触れているところが温かいというより心地よく熱を持っていて。

「……山崎さん」
「い、いいから早く休め!」

こんな……心臓の音がうるさすぎて全然眠れるなどという気配は無くて。
本当に一体……どうしたものだろうか。





24.4.25
現世の夢


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